前世と中間生 -生まれ変わりを題材にした映画ーワン・モア・タイム

 先日「ワン・モア・タイム」という1989年(23年前)のアメリカの映画を見ました。主人公の男性が交通事故で突然亡くなって、生まれ変わって残した妻と子供に会いに来ると言う話です。

 もっと詳しいあらすじを書きましょう。

 物語の最初の舞台は1963年のアメリカのワシントンDCです。検事のルイ・ジェフリーズとコリンヌの結婚式が行われている場面から始まります。二人の友人の男性ワシントン・ポスト紙の記者フィリップ・トレインは密かにコリンヌを好きでしたが、友人の為に二人の結婚を祝福します。

 結婚から1年後、二人は1回目の結婚記念日に夫は妻に素敵なイヤリングをプレゼントし、妻はプレゼントの代わりに妊娠したことを夫に告げます。
 その直後夫のルイはある事件に巻き込まれ、ギャングの親玉のような男と裁判官がわいろをやりとりしているのを偶然見つけ、写真を撮ります。

 ルイは事故を装った車にはねられて即死します。妻に思いを残してあの世(私は中間生と呼びますが)に行って、ルイの魂は、死んだ記憶がないのと地上にもどって妻に会いたいと言う思いがつよく、死者が順番に待っていなければならない場所で大騒ぎします。あの世のお世話係は、男女とも白いスーツを着ていて、受付をしています。その服装はまるで、公的な病院の白い服装をした事務職の人か役人のような感じです。

 困った世話係は順番を早めて、対処します。彼にどんな風貌で、どんな家庭がいいかと聞きます。裕福な両親とか豪邸に生まれたいかとか、どんな人種がいいのかとか、どこに生まれたいかなど、いろいろ希望を聞きます。ルイはお金持ちなんか関係ないから、愛する妻の住んでいるできるだけ近くに生まれたいと言います。

 ルイの勢いに押されて、慌ててしまった世話係は、前世の記憶を消す太い注射をルイに打ち忘れます。これは大変なことになるぞと言って、世話係は人ごとのように対処しません。ルイは記憶を消されぬまま地上に生まれます。

 23年後、映画の中では現在になります。アメリカの東部の田舎からエール大学の4年に在籍して、前世がルイである22歳の男性のアレックスはお金持ちではないので、図書館でアルバイトをして学費の足しにしています。

 そこへ同じ年でエール大学4年のミランダ(実は前世の彼の娘)と出会います。ミランダは弁護士を目指していて大学の本を滞納して返し忘れていて、高額の罰金をはらうか、払わなければ、本を使った授業の単位を教授に取り消してもらうと大学の司書に言われますが、事情を聞いたアレックスは彼女の為にコンピューター上での借りた記憶を消して、事なきを得ます。この時点では都合のよい事に彼の前世の記憶は戻っておらず、二人は惹かれあいます。そして、卒業後、二人は、ばらばらになります。

 アックス(前世はルイ)はワシントン・ポスト社の編集長に大学であったことがあり、社交辞令で卒業したら 訪ねて来なさいという言葉を真に受けます。ワシントンポストに行き、編集長に就職を即断られます。その場に居合わせたワシントンポストのメインの記者フィリップと知り合い、アレックスは彼をコリンヌとミリンダ親子の家の場所まで車で送ります。48歳のコリンヌはルイが忘れられず、新婚時代の時の家にそのまま住み、誰とも恋愛できないでいます。

 アレックス(前世のルイ)とコリンヌの家は家具から部屋まで、彼が生きていたときのままにされていました。しだいにアレックスは前世のルイだった記憶がよみがえり、引き出しのどこになにがあるかを当てて、自分でも混乱します。やがて、ルイの記憶が全部よみがえり、ミランダが自分の子供であったことを知ります。彼に恋人として迫ってくるミランダを拒否します。(魂は同じですが、体は別の他人なので遺伝上の親子関係はありません。)

 外見がアレックスで心はルイは、コリンヌに全てを話します。驚いた彼女は16歳もの年の差の男の子が自分と付き合いたいから、最初はいたずらをしているのではないかと考えます。しかし、博物館員をしていたコリンヌが皆を博物館のチャリティ・パーテイに招待して、アレックスが二人しか知らない結婚記念日のイヤリングのプレゼントのことを話したら、コリンヌは22歳の彼が夫の生まれ変わりであることを知りだんだん好意を持ちます。でも、二人がデートをすると、周りの人が親子のように見えることからコリンヌは落ち込みます。

 友人のフィリップは彼女に手を出さずに紳士的に父親代わりに、コリンヌ・ミリンダ親子に23年尽くしてきました。アレックスとコリンヌは懐かしくてデートの帰りにもう少しのところで男女関係になりそうになるのですが、そこへフィリップが急に家に入って来て、ミリンダの恋人だと思っていたアレックスが自分の恋するコリンヌと抱き合っているのを見て、アレックスに殴りかかり、逆にアレックスにのされてしまいます。

 倒れたフィリップを見たコリンヌは、自分の好きだったのは22歳のアレックスではなく、23年を家族同然に
すごしたフィリップが自分の大切な人であったことに気付きます。

 ミランダの初弁護士の仕事を親として見に行ったアレックスは、その裁判官があの自分の死ぬ前に写真にとった男であることに気付き裁判官につめより法廷で逮捕される時に、頭を打って気を失います。

 彼が病院で寝ていると、あの世の世話係が、太い注射をもって現れ、アレックスに前世の記憶をなくす注射を打ちます。ルイの記憶は完全になくなります。そのあと、コリンヌが寝ているアレックスの前に現れ、寝ている彼に向って、あなたはもう昔のルイ(自分の夫)ではないこと、23年フィリップと一緒に生きてきたので、彼が大切であることを打ち明けて病室をでます。

 最後は、フィリップとコリンヌ、そして、アレックスとミランダの2組の結婚式の場面で終わります。


 長くなりましたが、この映画の脚本家や監督は前世や中間生の予備知識なしで、制作したのではなく、いろいろ書かれている事や言われていることを調べて作ったのではないかと思います。

 魂としては前世や過去世で親子だった同士が、現世で結婚することは、よくあります。私も結婚していた前の夫とは前世では親子でした。

 それから、中間生での記憶の消去ですが、何回も繰り返し私が言っているように、中間生では物質はないので、その前世の信じていた死後の世界のイメージが出て来ます。死後の世界に三途の川があってその川を渡ると前の人生の記憶が無くなる、と信じていれば、中間生は、信じる人にはそのイメージになるかもしれません。けれども、キリスト教やイスラム教やユダヤ教の信仰者には、死んでから行く世界には、三途の川はないのです。彼らは自分たちの信じる神に会うかもしれません。信仰のない現代に近い人生の場合は、前世の記憶を消すのは注射かもしれません。あるいは未来の世界では、宇宙人に会って記憶を消されるイメージを持つかもしれません。

 まさに中間生は、思い描けば出てくるバーチャルリアリティの世界なのです。

 次回もまた映画などの世界から転生を見ていきましょう。古代文明や不思議な話があったら、それもテーマに加えますね。
スポンサーサイト

未来観と生命観 手塚治虫の火の鳥から -後篇

 今回は手塚治虫の未来のイメージと生命観がわかる「未来編」をみていきましょう。

 未来編はちょっと長い話ですが、あらすじを追うと、未来の3404年、環境汚染によって、地上では、動物や緑がきわめて少なくなり、人類は巨大な地下都市を作ります。世界には、国はなくなり、人口500万人ずつ位の、5つの巨大地下都市が出来ています。

 主人公のマサトは「メガロポリス・ヤマト」に住んでいます。マサトは独身で、ムーピーという不定形宇宙生物(生息する星の生物に姿を変えて順応する生物。)で若い女性の姿をしたタマミと共に生きていました。ムーピーはシリウス12番星に住んでいて、人類によって、その星から強制的に連れて来られて、ペットになります。ムーピーの能力として人間に幻覚をみせるのですが、この能力が権力者に嫌われてムーピーのほとんどは殺されてしまいます。マサトは上官のロックからムーピーであるタマミを殺せと命じられますが、マサトはタマミが好きで殺すことが出来ません。そして、人類戦士というエリートの職業であるマサトはタマミと地下都市ヤマトを脱出します。

 二人は何もない地上で生活して、変人と言われている、猿田博士のもとにたどりつきます。猿田博士は地上で絶えてしまった動物や人間の種を再び作ろうと研究しています。二人がたどりついた後、5つの地下都市は各都市のマザー・コンピューター同士が暴走し、核兵器による最終戦争が起こります。

 猿田博士は絶滅した種を一から作ろうとしていますが、それは神の領域で、ことごとく失敗します。人工胎盤装置の中で生きる人間に近い知的な生物が、本人の希望で羊水から出て外気に触れると、細胞がばらばらになってしまいます。(まだクローン細胞が研究されていない時代に手塚氏は種の再生というテーマを描いています。)

 猿田博士はマサトと不定形生物であるムーピーが研究所に来てから、ムーピーの生命力をもとに新たな世界を創造しようとしました。そうしているところに、マサトの上役で階級が上の人類戦士ロックが小型飛行機でやってきて、ロックはマサトのムーピーのタマミを誘拐しようとしますが、マサトの抵抗にあいます。

 マサトの所に火の鳥が現れ、地球を復活させるためにマサトを不死の体にします。

 人類は未来をコンピューターに託し、コンピューターの計画通りに各メガロポリスの都市は戦争をして、地下の人類すべてが滅ぼされてしまいます。生き残ったのは、マサトとロックと猿田博士、とムーピーのタマミだけでした。

 マサトは火の鳥から大変な使命を受けるわけですが、永遠の命を授かる前に、火の鳥は、ブッダがさとったといわれている悟り、宇宙の限界と細胞の素粒子の中の宇宙をマサトに理解させようとします。火の鳥は「宇宙はひとつの粒子にすぎない」と言って、極大のものも、極小のものまで、みんな「生きて」活動していると火の鳥はマサトに教えます。(ここに、手塚治虫の宇宙観、生命観が出ています。)今は素粒子よりもっと小さいナノ粒子が見つかり、さらにもっと小さいタキオン粒子も見つけられようとしている時代になりました。でも、私も、極大のものと極小のものはおなじであるという、考えに自分の能力が出てから、実感を持ちました。前にもブログで書きましたが、エネルギーの実態は宇宙の中をさまよう巨大なものにもなりえるし、人体の中を流れる極小の情報エネルギーにもなり得るのです。)

 それぞれの人は膨大な量の情報を自分の中に内在させています。

 話を戻しますと、原作ではマサトは不死身のからだになって、自分を傷つけたり、撃ったりします。でも傷はすぐ元に戻ってしまいます。マサトは不死身の体になったことに恐怖します。それは、永遠の孤独も意味するからです。

 マサトを愛しているムーピーのタマミはマサトの為に、猿田博士の実験台になって、核戦争が地上に影響を与えた放射能からマサトを守る方法を考えてもらおうとします。ロックは死を覚悟して、小型飛行艇で空中に行きます。猿田博士も亡くなって、マサトとムーピーのタマミは生き続けますが、やがて、ムーピーの寿命でタマミも亡くなります。最後に一人残ったマサトは、猿田博士の研究をひきつぎますが、生物を作り出すことができません。タマミの姿をしたロボットを作っても、ことごとく失敗してしまいます。そして、火の鳥はロボットには生命は宿らない事をマサトに教え、見守りつづけなければならないと教えます。マサトは年をとり、生き続けます。


 マサトは海に有機物を流し、生命が生まれてくるのを忍耐強く待ちます。とうとう不死のマサトの肉体も年月に耐えられずに風化してしまいます。けれども、マサトの魂は生き続け、ずっと見守っています。手塚治虫の考える進化の過程がお話の中で起こり、とうとう哺乳類まで来て、人類が発生します。マサトは30億年地球上の生物を見守り続け、結果的には神のような存在になりました。

 手塚氏は全ての生物は宇宙生命(コスモゾーン)であるとして、その生命が物質に飛び込むと、初めてその物質は「生きる」事になると言っています。それは銀河のような大きなものから、地球も動植物も細胞も、原子も粒子もみんなコスモゾーンが入って生きていると、彼は考えました。そして、別の生物だったタマミの生命とマサトの生命はこの宇宙生命コスモゾーンで合体して、話はまた、黎明期に続いていくのです。

 私の考えでは宇宙生命と表現されているのが、魂でこれは属性をもった他と分化している、ある種の情報のエネルギーなのです。宇宙とイコールのものではありませんが・・・

 手塚氏の中に仏教の考え方が根本にあるのではないかと考えます。彼の描いた「ブッダ」にもこの思想は貫かれているのかもしれませんね。

 次回はまた、古代文明のこと、最近興味のあることなどをお話しましょう。

未来観と生命観 ー手塚治虫の火の鳥からー中編その2

 今回も火の鳥から未来観・生命観を見ていきたいと思います。

 火の鳥の話を見ていく前に、今日のテーマに関連したことで、最近ティース・バンク(自家歯牙移植)のニュ-スを見ました。これは紀元前からあったそうで、やむ負えず抜くことになった健康な自分の歯、親知らずや、事故で抜けてしまった歯を冷凍や薬液につけておいて何年も保存して、その後に虫歯等で抜けてしまった部分に移植して再利用することです。今の技術では、無傷の健康な歯を移植しますが、未来には歯の一部があれば、抜いてから治療してそれを培養して完璧に健康な歯にして移植することも可能になると思います。
 
 もっと先の未来では、自分の歯の種になるようなものを歯茎に植えて、特別な栄養を与え早く成長させて永久歯にすることも可能になると私は考えています。

 また、現在めざましい勢いで研究が進んでいるIPS細胞(人工多能性幹細胞)は人体のどの部分にもなりえる細胞で分裂をするときに自分とまったく同じ性質の細胞を生み出すことができ、自己複製能力を持つ細胞なので、SF小説の中の世界がまさに現実になりますね。つまり悪いところをとりかえることができるようになると思います。IPS細胞は遺伝子治療にも応用できるそうです。

 人間の夢(欲ともいえるかもしれません)は健康で長く生きること、火の鳥のメインテーマである不老不死ですね。体のパーツをとりかえつつ長く生きることで、果たして人間は幸せになるでしょうか?


 「アイランド」というSF映画が何年か前にありました。これはある会社が違法に、有名人や政治家やスポーツ選手やお金持ちの健康なクローン人間を作って、依頼主が病気になった時にそのクローン人間の内臓をとって命を断ってしまうという怖い映画でした。主人公はクローン人間のカップルで、本人と上手くすり替わることが出来てその会社を世間に告発し、他のクローン人間全てが実験室から解放され、人権を持ちます。簡単なあらすじで分かりにくかったかもしれませんが、万能細胞があれば、自分の皮膚の細胞をひとかきするだけで、内臓のパーツの一部だけを作ることが出来るのでこのようなことはおこりませんね。でも脳全体を取り換えるとしたらどうなのでしょう。

 体の細胞や内臓を新しくして寿命をのばすというやり方と、SFでは壊れた人間の部位のかわりに機械で補って寿命を延ばしたり、特別な能力をもつという発想もありますね。映画では「ロボコップ」が怪我で脳や体のほとんどが機械になってしまった警官の物語がありました。

 火の鳥の話に戻りますね。今日は復活編で未来の話です。西暦2400年代、25世紀の地球は環境破壊にさいなまれています。(50年近く前に手塚治虫氏は、今を予言しているように見えますね。)主人公の青年レオナは地球を再生する構想フェニックス計画のスタッフでした。彼は研究施設の爆発事故に巻き込まれて、救助されます。一部の脳をやられてしまい、脳の中のかなりの部分に人工頭脳を埋め込みまれます。それで命は助かったのですが、大変な副作用?が起こります。それは事故以前の記憶を無くしてしまい、人間を人間として認識できないでガラクタに見えてしまうのです。レオナは心が機械になってしまったのでしょうか?

 彼は廃棄物処理場で、旧型事務系ロボットのチヒロと出会って、ロボットの彼女を美しいと思い、恋に落ちます。機械が人間にみえてしまうわけですね。

 医療施設を抜け出したレオナとチヒロは爆発跡地にたどり着きます。レオナの旧友ランプは実は悪だくみを持っていてレオナから「永遠の命」の情報を手に入れようと、卑怯な手段で二人を追いかけます。作者はこの話の中で「一度壊れてしまった世界はどんなに手をつくそうと元には戻らない」と主人公に言わせています。主人公の父親が地球崩壊にはどめをかけようとするのですが、地球再生計画は打ち切りになって、主人公の父は抗議の自殺をしてしまいます。そのことを、主人公は少し恨みに思っています。

 その後、主人公のレオナは地球復活の使命をおびて月に来て、火の鳥の羽を手にいれて、生命の謎を解き明かそうとした過去を思い出します。火の鳥の羽の分析が終わって彼はデータをコンピューターに保存します。悪人のランプは彼を殺してでもデータを奪おうとします。

 爆発で死にかけた時、レオナは火の鳥に話しかけられました。「あなたは死ぬ。でもあなたは何度でもよみがえるでしょう。生と死のはざまを漂って復活するのがあなたの運命」という予言をして消えてしまった記憶を彼は思い出します。お話の最後の場面では、レオナは足に車のついた旧式のロボット「ロボタ」になって、火星で再生して、小さい子供の子守りをしています。ロボタは他のお話でも再生して出て来ます。

 心が機械になったり、脳が機械に置き換えられると魂はどうなるのかという難しい問題に直面します。また記憶を取り出すことが出来て新しい体に宿った時に、自分の根源というものは何なのだろうかという哲学的な難問も抱えることになりますね。

 次回は手塚治虫の生命観がもっともよく現れているお話をとりあげてみましょう。

 

未来観と生命観 -手塚治虫の火の鳥からー中編その1

 新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 今日は火の鳥の内容に入ります。お正月の1回目なので、「羽衣編」のことを書こうと思います。火の鳥の羽衣編は18種類の時代の話の中でいろいろな要素を盛りだくさんに含んでいます。民話の羽衣伝説を下敷きに、雪女の要素があったり、かぐや姫を思い出させたり、芥川龍之介の「藪の中」という小説の中のシーンににていたり・・・

 やはり、火の鳥の中で必ず出てくる鼻の大きな猿田の生まれ変わりの人物が出て来ます。この話では主人公になっています。

 「羽衣編」の簡単なあらすじは、母親に捨てられてみなし児として育ったズク(猿田の転世した者)は生きるために山賊になっています。山で会った不思議な少女(「ブラック・ジャックのピノコのような外見の少女です。)に松の浜辺に行くよう言われます。浜辺には光る羽衣を巻いた美しい女性が倒れていて、ズクは山賊のさがで、女性から高価そうな光る衣を奪います。

 美しい女の人は、記憶を失っていましたが、光る衣がなぜか大切な気がして、ズクのあとをついて来てしまいます。記憶を失った女性は、ズクの家で彼と一緒に暮らし始めます。ズクは彼女に自分を置いて出て行った母親の名前「トキ」という名前を付けます。ズクは食べるために、山の峠を通りかかる旅人をつぎつぎと襲い、ある時は傷つけて金品を奪います。奪ったものは村の強欲な長者のところに、売りに行ってお金に替えて生活しています。

 不思議な少女はズクの良心を呼び起こそうと、ある時は説教したり、ある時は、ズクを脅したりして強盗をやめさせようとします。ある時、ズクが旅人を刺そうとして、家族連れなので躊躇していると、子供に刺されてしまいます。その看病をトキは一生懸命して、二人は次第に愛し合うようになります。

 トキが身ごもって、ナギという男の子を産むと、ズクは子供の為に、山賊をやめようとします。さらに貧しい生活が続きますが二人は幸せそうでした。
しかし食べていけなくなって、ズクはまた山賊に戻りそうになります。不思議な少女は「鬼のような悪い事をしていると本当の鬼に襲われるよ」と警告します。

 ところが、冬の寒い日に幼いナギが高熱を出して死にそうになり、トキは大切な衣をズクに与え自分はどうなってもいいから子供と夫を助けるために、村に衣を売りに行って欲しいと夫に頼みます。ズクは強欲な長者のところに行って子供の為に薬を分けて欲しいと頼みますが、相手にされないで断られます。長者は用心棒達に命じて腕力で衣をズクから奪おうとします。(ホントの鬼って強欲で残酷なお金持ちの長者さんだったんですね。)

 もみあっているうちに、長者の家が火事になって、ズクはどさくさで薬をもってきますが、傷を負って自分の家の近くの妻と初めて会った松の木の根元で、息絶えます。トキは愛する夫を失ったのです。

 トキが死んでいる夫を見つけて、駆け寄った時に、不思議な少女が出てきて、火の鳥に変身します。正確には、火の鳥が不思議な少女に変身していたわけです。火の鳥の姿を見たトキは、一瞬にして、記憶が戻ります。未来の布の羽衣を持っていたトキは、遠い未来から火の鳥につれてこられたズクの母親の魂のたくさん転生した果ての未来人の女性だったのです。彼女は未来でもズクに対してやったのと同じように、未来での自分の幼い息子を捨てて、育児から逃げようとしていたのでした。火の鳥は繰り返していることを気付かせる為に、物事の(仏教では)因果を理解させる為に因果の最初の原点より少し後に、彼女を送ったのでした。そして、不思議な少女になり二人をナビゲイト(導いていたのです。)

 子供を残して去ってしまった結末に子供が人生を恨んで、人を殺したり、盗人になってしまったということを彼女に気付かせようとしたというテーマです。

 手塚氏は仏教の因果応報話やいろいろなものを見てこのお話を構築したと思います。従来の羽衣伝説より面白く脚色されていますね。

 実際の生まれ変わりの事象は、既存仏教の俗説の因果応報的な法則で動くものではありません。悪い事をしたら、悪い事が繰り返されるという単純なものではないのです。

 単純にリンクとして自分で設定するのです。残念なのは、母親に捨てられて、悪い人になってしまったという設定です。母親がこの年齢で離れると言う事や子供を捨てて別の生き方をするというのは、道徳的にみると許されないと思うかもしれません。しかし、縁がそのときまでであって、母親に捨てられた人が、素晴らしい偉業をなしとげたり、普通の人の経験できないことを知ったり理解したりするかもしれません。生まれ変わりは道徳の生まれる以前からありました。生まれ変わる人生それぞれの魂にとっては善悪はないのです。

 「羽衣編」は素晴らしい作品でしたが、転生に関しては、もっと複雑に扱ってもらえれば、さらに素晴らしいものになったと思います。

 次回は別の作品をとりあげ、最近思いついた話題もあったら書きますね。

プロフィール

観音寺りえ

Author:観音寺りえ
アトラス研究所の観音寺りえです。

鑑定とカウンセリングご希望
の方は当研究所 
住所: 東京都文京区千石4-37-10 
TEL: 03-3942-1341
まで。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード