不思議な話 その139 ドラキュラ伝説(3)

 今回も吸血鬼の話です。今まで吸血鬼を扱った映画は1922年~2013年までの中で、約110タイトルあります。(ウィキペディアから数えてみました。)そのうちの日本の映画は全体の1割で11作、ヨーロッパ、香港、台湾がいくつか、最も多く作っているのがアメリカで(合作も含め70作以上)、その次がイギリス(合作も含め、20作くらい)日本は3番目に多く作っています。吸血鬼伝説があるハンガリーやルーマニアの映画はそれぞれ1つずつしかありません。小説は世界で50作くらい、ドラマは12種類以上、日本での吸血鬼題材の漫画は77種、アニメは15作、その他ゲームやオペラや芝居の舞台の登場人物でたくさん出てきます。
 なぜ、人は吸血鬼の話に惹かれるのでしょうか?

 その話の前に、吸血鬼の話の主人公のモデルとなったもう一人の歴史上の人物を調べてみました。

 その人物は女性で、バートリ・エルジェーベト(エリザベート)という貴族です。(1560年~1614年)バートリ家は16世紀~17世紀のハンガリーのトランシルヴァニア公国の中で、最も有力な貴族でした。ポーランド王ステファン・バートリの姪にあたり、当時のトランシルヴァニア公爵やハンンガリー王国の宰相の従兄妹でもありました。有力者もいるし、血族結婚のせいで、悪魔崇拝者と悪口を言われた親類もいて、性的に放縦な親類もいたそうです。彼女も、感情の起伏が激しかったそうです。

 1575年に彼女は15歳で5歳年上のハンガリー貴族ナーダジュディ・フランツ2世と結婚させられました。エリザベートのほうが高い身分だったので、結婚後もバートリ姓を名乗りました。夫はオスマン帝国との闘いで、ハンガリー軍の指揮官の一人で強かったそうです。英雄としても、敵に対して残虐な指揮官でもありました。この夫婦に子供は6人いました。

 エリザベートは数か国語の読み書きが出来る才女だったそうです。賢い女性で、夫に代わって城と荘園の管理を行い、諸外国に留学する優秀な学生達の援助もしました。

 オスマン帝国との戦いで夫が留守がちだったので、エリザベートは、多くの性別を問わない愛人を作りました。恋多き美しい人で、贅沢をすることと、その美貌を保つことに執着したといいます。夫婦仲は良かったのですが、1604年に戦いから帰った夫が亡くなると、奇行が多くなっていきます。以下は史実かどうかはっきりしませんが、やや残酷な内容です。目下の者に残酷な仕打ちをする夫の影響か、あるいは、彼女の本性から来たものか、召使が言うことを聞かないと折檻するようになり、見習いに来ていた、下級貴族の娘に拷問してその血を浴びたりしたという話が伝わっています。賢い女性がそんな事をするのかは、疑問ですが、地元のキリスト教のルター派の牧師の告発で、公になります。ハンガリー王家でもこの貴族の娘への犯罪のうわさが伝わり、城に捜査に入った役人たちは、多くの死体と衰弱した生存者を発見したとされています。でもこれはねつ造なのか事実なのかはわかりません。

 一説には、彼女は1609年にベンデ・ラースローという年下の男性貴族と再婚を望みましたが、遺産の自分たちの取り分が減ると考えた親類の人々の陰謀によって、彼女に対する誹謗中傷攻撃が始まりました。また一説には彼女の従兄でトランシルヴァニア公のガーボル・バートリがハプスブルク家のウィーン宮廷と対立していたので、ハプスブルク側が、中傷をねつ造したのかもしれません。最近の研究では、遺産相続人がいないまま未亡人になった彼女に対し、(昔は男子の長子継承で、子供がまだ成人していないなどの理由で、)政治的な理由による、領地裁判の犠牲者(いわゆる魔女裁判の犠牲者)という見方があります。彼女の反ハプスブルグ、親トランシルヴァニアの行動のために罪に陥れられたのかもしれません。証人の召使たちは拷問され強制された証言をしていて、彼女は無実を訴えました。当時も中世からの悪習で、邪魔な人間を魔女や反キリストの悪魔の手下としていちゃもんをつけ、身分や財産を奪うこと(魔女裁判)がヨーロッパのキリスト教圏でよく行われました。善良な人々もいわれのない黒魔術や魔女というレッテルをはられ処刑されました。彼らを陥れた人々のほうが、よほど悪魔の所業だと思います。

 男性の従者2名と女性の召し使い2名が処刑され、彼女は身分が高いために処刑はされず、小窓が一つしかない部屋のドアを塗り固め、1日1食だけ与えられ、3年半生きながらえたということですが、牢に閉じ込められたまま亡くなりました。ハプスブルク家の当時のハンガリー王がエリザベートの夫に対して抱えていた膨大な戦争の負債を帳消しにして、有力貴族のバートリ家の権力を抑えるためではと一族や残された家族は主張しました。その後もオーストリアのハプスブルク家の勢力に対して、エリザベートとフランツの子孫ナーダシュディ家は謀反を起こした容疑で処刑されています。貴族の爵位を一時的に奪われましたが、子孫のナーダジュディ・フェレンツがオーストリアの継承戦争や7年戦争で功績があり、爵位を取り戻しました。

 その後もハプスブルク家の強大な勢力に対して、マジャール貴族たちはバートリ家を中心にハプスブルクに抵抗運動をしました。ハプスブルク家とマジャール貴族によるハンガリー独立運動は、18世紀まで続きました。

 エリザーベトを扱った映画は4本あって、その中の2本を見ました。最近見たのは、2009年ドイツ、フランス合作の「血の伯爵夫人」という映画で、フランスの女優ジュリー・デルピーが、監督、脚本、製作、音楽を担当し、主演もしています。このあらすじは史実とエリザーベトの伝説に忠実ですが、再婚をしようとした恋人との恋愛が中心に描かれています。

 二人の仲は恋人の父親の策略で裂かれてしまいます。恋人が彼女の亡きあとに彼女について語るという筋立てになっていて、父親は彼女の残酷な行為をそそのかす男を彼女のもとに送り込みます。そして、恋人の父親は、ハプスブルク家のハンガリー王にも借金が棒引きになると王様に持ち掛けてエリザベートを裁くように仕向けさせます。彼女は恋人から自分が年上で、容姿が衰えてきたから、捨てられたと思い荒れていきます。恋人を振り向かせるために美しさを維持しようと、若い乙女の血を肌に塗るという、カルト的な映画になっています。禁じられた恋の苦しさから、彼女が狂気に向かってしまう過程を、主人公は迫力ある演技で演じています。怖いけれど同情してしまうところもあります。彼女はゲームのキャラクターや音楽の主人公にもなっています。

 彼女を描いた文学作品は、1827年のファーイ・アンドラーシュの『二人のバートリ・エルジェーベト』や、シュプカ・ゲーザの『呪われた女』(1941年)などがあり、ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』(1872年)もエリザベートをモデルにしています。

 小説が書かれた時点で、彼女の伝説は作り上げられてしまいました。

 歴史上の人物ドラキュラ伯爵とエリザベート・バートリをモデルにしてたくさんの映画、ドラマなどなどが生まれましたが、小説や映画で吸血鬼という架空のキャラクターが一般に知られるようになりました。昔は、キリスト教の布教映画として、反キリスト、イコール悪魔の化身の吸血鬼というパターンが多かったです。キリスト教にたてつくもので、邪悪な者、光に弱く、暗闇でしか活動できないことなどが、吸血こうもりの恐怖と重ね合わされ、ホーラー映画の定番になりました。吸血鬼を退治するヴァン・ヘルシング博士も登場し、吸血鬼は邪悪な存在で、若い娘を襲い、その娘を吸血鬼にします。退治するには光にあてるか、なかなか死なないので、心臓に木の杭をうって退治します。吸血鬼は永遠の命を持ち、ニンニクを嫌い、最近までは悪役でしたが、吸血鬼側からの映画もたくさんできました。悩む吸血鬼、恋をする吸血鬼、死ねなくてつらい吸血鬼など・・・最近の映画やドラマでは、吸血鬼の若者に恋をしてしまう、美少女の映画やドラマがあります。永遠の若さや命への憧れや人の心を操作できるとか、空を飛べるとか、人間ばなれした力など、吸血鬼の特殊な能力への憧れが人々を引き付けるのでしょうか?

 次回は最新の吸血鬼映画やドラマについて書いて、まとめてから新しいテーマを書きましょう。


  
スポンサーサイト

不思議な話 その138 ドラキュラ伝説(2)

 前回の続きです。小説や映画の吸血鬼ドラキュラは架空の話ですが、その話のモデルになった人は二人います。いわゆる吸血鬼伝説のモデルです。

 その一人はワラキア公国の君主で、トランシルバニア地方のシギショアラで、ヴラド2世の次男として1431年に生まれた、後のヴラド3世ヴラド・ツェペシュです。彼は諸侯の貴族の力が強かった15世紀のワラキアで、強力な中央集権化を進め、当時強大な力を誇ったオスマン帝国と戦いました。

 ツェペシュは姓名ではなくてニックネームのようなもので、ルーマニア語で、「串刺しにするもの」を意味するそうです。1430年代ヴラド3世の父2世は、神聖ローマ帝国からドラゴン騎士団の騎士に任命され、ドラクルという名を付けました。このドラゴン騎士団のドラコに由来しています。1444年のヴァルナの戦いで、ワラキアを含むバルカン半島のキリスト教の貴族連合ヴァルナ十字軍がオスマン帝国に負け、ワラキアはオスマン帝国の属国となり、ヴラド3世は弟のラドゥ公とともに人質になりました。ヴラド3世はハンガリーが支配していた、ワラキアをオスマン帝国の後ろ盾で取り返します。ハンガリーはウラド3世の兄を暗殺してしまいました。1456年に対立していた、トランシルバニア公フニャディ・ヤノーシュの庇護のもとにワラキア公3世となり、1459年には、ワラキアの有力貴族を倒し、中央集権化を進めました。公の自分の直轄軍を作り、彼を子供のころ人質にしていたオスマントルコ帝国への従属と貢納を拒否しました。オスマン帝国がワラキア国に使者を送ると、ちょっと残酷なしうちですが、使者を串刺しにしました。怒ったオスマン帝国の皇帝メフメト2世は大軍を率いてワラキアに何度か侵攻します。ヴラド3世はゲリラ戦と焦土作戦で、抵抗し、ワラキアを侵攻したオスマン帝国のメフメト2世は、ヴラド3世によるオスマン帝国兵の串刺しを見て、戦意を喪失して、ワラキアから撤退したという言い伝えがあります。

 オスマン帝国はウラド3世の弟ラドゥをワラキアの君主にしようとして、ヴラド3世を追い落としにかかりました。ヴラドはトランシルバニアに逃れました。ハンガリー王マチャーシュー1世に捉えられ、表面的にはオスマン帝国に協力したという罪で投獄されました。ここから、ハンガリーに対する敵意が半キリストというイメージを植え付けられたのかもしれません。映画「ドラキュラ」(フランシス・フォード・コッポラ監督 1992年製作)や最近の映画「ドラキュラゼロ」(ゲイリー・ショア監督 2014年)などにフィクションですが、彼がドラキュラになるいきさつが描かれてあります。

 1474年にウラド3世は12年間の幽閉から解放され、3世はギリシャ正教会からカソリックに改宗します。マーチャシュ王の娘と結婚します。1476年彼は3度目のワラキア公に返り咲きますが、ほどなくしてオスマン帝国と戦って、戦死したといわれています。あるいは暗殺されたのかもしれません。

 彼が生きているときは「串刺し公」というニックネームより、ヴラド・ドラキュラ(ドラクリア)と署名していたようです。当時の串刺しの刑罰は、農民に対してだけ行っていたものを、オスマン帝国軍だけでなく、ワラキアの謀反を起こした貴族にもやって、通常貴族は斬首によるものが多かったのに、貴族に卑しい刑罰を課すことで、君主の権威を知らしめたということです。ヴラド3世はイスラム教のオスマントルコ軍から、ヨーロッパのキリスト教の国々を守ってくれたけれども、ルーマニアと敵対していたハンガリーの宣伝で、悪魔のような領主というイメージをつけられてしまいます。

 ドラキュラの由来は先ほどの竜の騎士という由来と、「竜の息子」、「小竜公」という意味で、父親のヴラド2世もドラクル「竜公」や「悪魔公」と言われました。ドラクルの息子だから「ドラクレア」(ドラキュラ)公と呼ばれました。新約聖書では、蛇や竜は悪魔の化身として描かれることが多かったので、敵対勢力から、ドラキュラは悪魔の子という不名誉な悪口を言われ、後に吸血鬼ドラキュラの伝説になります。

 西欧ではウラド3世はハンガリーのプロパガンダ(悪口キャンペーン)で悪人になっていますが、東欧ではオスマン帝国軍を破って東欧を守った英雄です。直系の子孫は絶えましたが、通称ドラキュラ城といわれるブラン城は現存するようです。

 このドラキュラの逸話は後世に地方の吸血鬼伝説と合体し、アイルランドの作家ブラム・ストーカーよって、小説『ドラキュラ伯爵』のモデルにされて世界中に広がってしまいました。この小説を原作にして、現代までいろいろな種類の吸血鬼の話や映画やドラマが生み出されました。

 次回は吸血鬼伝説のもう一人のモデルといわれた人物と、現代までの吸血鬼作品をいくつか見てみてなぜ人を引き付けるか考えてみましょう。

不思議な話 その137 その他の国の妖精伝説とドラキュラ伝説(1)

 その他の国の妖精伝説を最後にあげてみましょう。そして、吸血鬼の話がどこから生まれたのか探ってみましょう。

 「アルベリッヒ」は中世ドイツの英雄を描いた叙事詩『ニーベルゲンの歌に出てくる小人の妖精で、蛇やカエルに変身することが出来ます。物語ではニーベルゲン族の王様に仕えていましたが、ジークフリートとの戦いに敗れ、姿を消せる隠れ蓑を盗まれ、ジークフリートの部下になることを約束させられ、宝物の見張り役にされます。

 「アンドヴァリ」は北欧の妖精で、北欧神話に登場する小人族の一種です。地下に棲み、水中で魚になることも出来ます。黄金の指輪を持っていましたが、その指輪は他の人間が持つと死を招き寄せるとされました。この指輪は悪神ロキに奪われてから、次々にその所有者を変えて、多くの英雄の所有者が死ぬことになりました。(この話は、指輪物語のモデルになったような話ですね。)

「ヴァンニク」は、ロシアのサウナ風呂に棲んでいるとされる妖精です。人間のような姿をしていますが、湯気を通してあいまいな姿で見られますので、はっきりしたシルエットは分からないそうです。人間が入り終わったあと、彼らのためにサウナを開けておくと、ヴァンニクがいろいろな精霊を連れて風呂に入ります。気を使うことで妖精と仲良くできると言います。

 「ヴォジャノーイ」はロシアの河川に棲む男性の水の妖精の一種で、顔は無精ひげを生やしたカエルに似て、水から出た上半身はアザラシのようです。普段は水車小屋や川の水門のところで待っていて、水の中に足を垂らしている者がいると、水の中に引きずり込んだり、泳いでいる人を溺れさせるそうです。

「コボルト」はドイツの家に棲む小人の妖精です。家人の眠っている間に馬の世話や皿洗いなど、家の仕事を手伝ってくれます。その報酬として一杯のミルクのようなものしか求めませんが、報酬を怠ると家を出て行ってしまいます。積極的なものは壁や天井を叩いてアピールしますが、役に立つ忠告も与えてくれるそうです。

「ザントマン」はドイツに伝えられている眠りをもたらす妖精で、老人の姿をしていて、魔法の砂をつめた袋を持ってやってきます。この袋から取り出した砂をかけられると、どんな人間でも眠くなり、ついうとうとしてしまいます。夜更かしする子供がいると、ドイツの母親たちは、ザントマンが目玉をとってしまうと脅かします。

「ティターニア」はシェークスピアの『真夏の世の夢』に登場する妖精の女王で、オベロンの妻です。「大地の娘」という意味でギリシャ神話の狩猟の女神アルテミスと同じローマ神話の女神ダイアナの通称からこの名前があります。妖精の女王は気に入った人間の男がいると、妖精の国に引きずり込み、飽きるまで愛を注ぎ込むといいます。

「ニクシー」はドイツの川や泉に棲む女の妖精で男の妖精はニクスといいます。金髪の美しい女性の姿をしていて、夏の良く晴れた日は川岸や木の枝に腰かけて、のんびり髪の毛にくしを入れています。ギリシャ神話の怪物セイレーンのように歌がうまく、聞き惚れると、水に引き込まれてしまいます。水の中で泳いでいる人をおぼれさせることもあります。町や村まで出てくることがありますが、衣服の裾がぬれているので、分かります。

「ネック」はスカンジナビアの川や湖に棲むと言われる妖精の一種です。人魚のような存在ですが、小柄な人間の姿をしていて、緑の歯を持ち、緑の帽子をかぶっています。陸上にいると、妖精のエルフとあまり区別できませんが、ネックの場合は体のどこかが必ず濡れていてわかります。男も女も魅力的で、音楽の才能があり、バイオリンやハープなどを演奏したりします。この音楽に聞き惚れた人間は水の中に引き込まれると言います。

「バーベカジ」はフランスとスイスの国境地帯にある山脈に棲む妖精で、身長20センチ、小人で夏季には眠り続け、気温が零度以下の冬だけ、白井家側の服を着て姿をあらわします。髪の毛や白いひげが生えていますが、低温のせいか、いつも氷の柱のようです。雪の中でも平気で歩けますし、スキーのように滑ることも出来ます。

「フェイ」は魔術を知っている美しい女性の妖精です。フランスやイギリスに数多く存在したそうです。姿は人間の女性と変わらず、魔術、薬草、宝石などの知識に詳しく、多くの富を手に入れ、老いることもありません。シンデレラを変身させた魔法使いも一説にはフェイの一人だという人もいます。

「リョースアールグ」は北欧神話の中で、天にあるアールブヘイムという妖精の国に棲んでいる妖精たちの意味で、エルフと同じで、「白井光のエルフとも呼ばれ、太陽よりも美しく、性質は善良で、人間にも友好的です。豊作をもたらし、古代北欧では、彼らのための祭りもありました。

「フォレ」はフランスの田舎の素朴な家に棲み、いたずらをします。憎めないところのある妖精で、彼らは人間に似ていますが、体に鳥の雰囲気を持っています。身長は大きく体はしまっていますが、雄鶏のように丸みがあり、真っ赤なとさかがあります。目はぎらぎらとして、かぎ爪があります。少しは良いこともしますが彼らのやることのほとんどはいたずらです。

「ラミナ」はピレネー山脈に近いフランスのバスク地方に棲んでいます。全身が毛むくじゃらの人間のような姿をした妖精です。男と女のラミナがいます。ラミナは人間を金持ちにもできれば、岩に変えてしまうことも出来ると言います。ラミナとうまく付き合えば畑仕事を手伝ってくれます。バスク地方の農家は毎晩彼らのためにごちそうを用意しておく習慣がありました。夜の間に来たラミナがそれを食べ、翌日にはすべての畑仕事がおわっているということがあるそうです。

「コリガン」はフランス西部のブルターニュ半島の妖精で、エルフに似た妖精です。北欧のエルフよりは身長が小さく、60センチくらいですが、男のコリガンは小悪魔のような雰囲気で、全身毛むくじゃらで、あご鬚が長く頭には角があります。女のコリガンは人間に近く、白いベールを体に巻き付けていて、夜は美しく見え、昼間は醜いといいます。コリガンは農家の守護神で、農家の仕事を手伝います。不思議な能力があり、遠い所に一瞬で移動したり、未来を予言したり、呪文で病気を治す力もありました。

 以上、世界の妖精伝説でした。

 次回は吸血鬼の話はなぜ人を魅了するのかということと、そのモデルになったヨーロッパの貴族を見ていきましょう。

不思議な話 その136 スコットランドの妖精とドラマ「アウトランダー」

 スコットランドの妖精の話の前に、アメリカのAXN製作のスコットランドを舞台にしたドラマ、「アウトランダー」のことを少し話しましょう。
作者は、アメリカで大学の先生をしているダイアナ・ガバルトンという女性で、原作はベストセラーになったようです。原題ではイギリスでは『コットンステッチ』アメリカではその題では地味すぎるのか、『アウトランダー』(よそ者、地域外の者)という題で2002年に刊行されました。、日本では『時の旅人クレア』という題で出版されました。その後同じ「アウトランダー」でドラマ化されました。全世界で2500万部売れたそうです。

 歴史的な調査に基づいて書かれていますが、全くのフィクションで、主人公クレアは看護師でしたが、第二次世界大戦後の1945年に夫フランクとスコットランドのハイランダー地方へ旅しました。そこで、妖精か魔女の儀式を目撃してしまいます。夫とはぐれて、儀式のあった巨石に触れると、ほとんど200年位前の1743年にタイムトラベルしてしまいます。彼女が最初に会ったのは、夫の先祖であるイギリス軍の残酷な性格のジャック・ランダル大尉で、彼女が暴力を受けそうになっているのを、スコットランド軍が助けてくれました。その頃のスコットランドはイングランドの支配下にありながらイングランド軍とスコットランド軍は対立していました。スコットランドの独立を目指している人々がいました。クレアはそんな人々に出会いました。ハイランダー地域の領主の甥であるジェイミー・ドゥーガル一行に助けてもらい、逆にイギリス軍にやられたジェレミーの傷の手当をして助けているうちにお互いに惹かれあいます。ハイランダー地方は古代ケルト語が起源の言葉を使います。

 二人はイギリス軍に捕まったり、逃げたりを繰り返しながら、クレアを助けるために、年下のジェレミーは彼女と結婚します。時を超えて主人公のクレアはタイプの違う2人の男性と結婚するのですが、これが、女性の読者をひきつけるのでしょうか?冷静で、理性的な歴史学者の年上の夫と、時代を超えて出会った年下で、誠実な野性的な過去の時代の夫、悪人といってもいい、夫の先祖の大尉は主人公と1740年代の若い夫をいじめる役になります。タイムトラベルは唐突で、説得には欠けていますが、ロマンチックさを追求するという点ではうまくいっていると思います。今後も話の展開に目がはなせません。

 それでは、スコットランドの妖精についてです。

「アンシーリーコート」というスコットランドに棲む悪い妖精は、小妖精のヤレリー・ブラウンやドァガーや小鳥のスターリングといろいろな妖精の種類があります。その妖精たちは親切にされても、その恩に報いようとする者は、その種ではいません。

「キルムリー」は、スコットランド低地の水車小屋に住む人間の形をしていますが、鼻が極端に大きく、口がありません。全体的には不細工な姿をしているようですが、水車小屋で、粉ひきなどの手伝いをしてくれます。「年老いたキルムーリよ」と呼びかければ、服従させることが出来ます。

「グルアガッハ」スコットランドの高地に棲む性別のはっきりしない小人の妖精で、腕も足も毛深く、農家などを訪れては、農作業を手伝います。ある農家を訪ねて、毎年決まった量の麦の脱穀を手伝っていましたが、約束の麦が用意されていないと、麦をすべて脱穀して、働きすぎて妖精が死んでしまったといいます。服をお礼にプレゼントすると、それがお別れの挨拶だと思って、泣きながら出ていくそうです。かわいそうな妖精ですね。

「ケットシー」はスコットランド高地に棲む猫の妖精で、深緑色の大きな猫の姿をして、長い耳を持ち、胸に妖精のしるしである、白い毛があります。知性のある猫で人間と話すことができます。二足歩行もできるそうです。自分の気配を消して、こっそり姿を見せ、移動することが出来ます。猫を虐待する人がいると、懲らしめに来るそうです。(長靴をはいた猫の童話はこの妖精からきているのでしょうか?)

「ケルビー」はスコットランドに棲む、馬の姿をした水の妖精の一種で、川辺の草原などで草を食べています。近づくのは危険で、触れると手がくっついてしまいます。馬だと思って、1度背に乗ると降りられず、水の中へ引き込まれてしまいます。7人の少女がこの馬にまたがり、水の中に引き込まれ亡くなったと言います。

「セルキー」はスコットランド北東岸沖のオークニーやシェトランド諸島に棲むアザラシの姿をした妖精で、この地方では、アザラシは毛皮を身に着けた妖精で、毛皮を脱ぐと人間の姿になるといいます。セルキーの男は、人間の姿になると人間の女を誘惑するそうです。女のセルキーは人間になるときに脱いだ毛皮を人が盗むと海に帰れなくなり、盗んだ人と結婚すると言います。(日本の天女の羽衣伝説と似ていますね。)

「バダッハ」はスコットランドの高地にいる妖精で、人間に似ているが、もっと醜いようです。普段はあちこちをうろついていて、親の言うことを聞かない子供のいる家を探し出すと、煙突から降りてきて、その子供をさらってしまうと言います。灰色のバダッハ・グラスは灰色の男でこれが目撃された家には死者がでるそうです。(日本の東北地方のなまはげに近い感じですね。)

「ピクト」はスコットランドで小さな丘に棲む妖精で、ペッホという赤い髪の毛で、人間の子供くらいの大きさがあります。建設が上手で集団で働くので、石造りの城でさえ1番で作ると言います。スコットランドにある城はすべてピクトが建てたという伝説があります。

「ファハン」は高地に棲む妖精で、目も一つ、足が一つ、腕も一つしかない姿で、頭ははげ、あごには長いひげがあります。邪悪なゴブリンの仲間で、ケルト神話に出てくるフォモールを祖先とします。(日本の一つ目一本足の唐傘の妖怪を思い出しますね。

「ローン」もアザラシの姿をした妖精で、「セルキー」と同じく、皮を脱ぐと人間の姿だと信じられていました。やさしい妖精で、漁師がアザラシを傷つけても復讐しようとしません。人間の姿になって仲間を傷つけないように頼みに来ると言います。

「ホブヤー」はかつてスコットランドに棲んでいたゴブリンの一種だといいます。見た目は滑稽で黒い影のような体に白い手足があり、夜中に人家に忍び込み人を食べてしまうという伝説があります。犬に全滅させられ、今はいないそうです。(日本の山姥伝説のようですね。)

 長くなったので、次回はまとめをして新しい話題を探しましょう。  
プロフィール

観音寺りえ

Author:観音寺りえ
アトラス研究所の観音寺りえです。

鑑定とカウンセリングご希望
の方は当研究所 
住所: 東京都文京区千石4-37-10 
TEL: 03-3942-1341
まで。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード