不思議な話 その204 ミイラの不思議(1)

今回はミイラの謎についてです。少し気持ちの悪い部分もあるかもしれません。

大切な人の死後、その肉体をミイラにする風習が、世界各地で行われていました。その目的は何なのでしょうか?ミイラは死後の来世と関連していると考えられて作られたのか、あるいは、異次元の存在や、神と結びつく為に遺体を保存したのでしょうか?

『古代の宇宙人』#83で「ミイラの秘密」というテーマで面白い説があったので、紹介しながら、感想も書いていきましょう。ミイラ化とは、乾燥してカラカラになった遺体の保存方法だけでなく、人間の死後に自然に起こる死体の腐食を防ぐあらゆる手段を、広い意味では指すそうです。

2005年のローマ法王ヨハネ・パウロ2世のご遺体は、薬品で長期保存され、「教皇の魂は、天国に永遠に導かれる。」と発表されました。ヨーロッパの葬儀の多くは、古代エジプトの死生観や埋葬の仕方に影響を受けているそうです。これもミイラ化の一つなのでしょうか?

私がブログで前に古代エジプトの「死者の書」について書きました。その時、キリスト教やユダヤ教やイスラム教は、エジプトの死生観、つまり「天国で永遠の命を得て、安楽に過ごせる。」という思想の影響を受けているという考えを書きました。

1924年に当時ソビエト連邦(今のロシア)の革命家、ウラジミール・レーニンが亡くなり、当時のソビエトでは建国の父なので、彼の遺体から臓器を取り除き、特殊な液体をそこに入れて、腐食を防ぎ、生き生きとした姿で、眠っているように見えるそうです。その後のスターリンも、ホーチミンも、マルコス大統領も毛沢東も同じような保存のされ方をしています。これらも、広義の意味のミイラ化です。なぜ、死後の遺体を生きているときのように保存しようとするのでしょうか?カリスマ性を維持しようとするためか、崇拝の対象にするためか、あるいは、古代エジプトのファラオのように、永遠に生きるためなのでしょうか?

古代エジプトでは、永遠に生きるためには、死後の世界にも肉体が必要だと考えられました。魂があるという前提で、死後には、肉体
から魂が離れて、身体が不要になると考えると、ミイラ化するのは、理にかなっていません 。ミイラになろうとする人々や、作ろうとする人々は、その人間であったことに執着しているので、ミイラにしてでも、その肉体を維持しようとするのでしょうか?

古代エジプトでは、ミイラ作りは、死後の世界のためという明確な目的がありました。王家の谷の墓地は、BC1539年~1705年くらいに埋葬されたのが多いそうですが、今まで分かっているだけで、63の墓があります。古代エジプトでは、死後の旅に出るには、魂をもとの肉体と再び結びつけなければなりません。肉体の保存にこれだけの労力をかけたのは、古代文明の中でも、エジプトが一番です。

古代エジプトでは、ミイラ化する体を乾燥室に入れ、臓器を取り出し、ナトロンという塩をつめ、心臓や、脳を取り出し保存します。甘い香りのオイルをつけて、再びナトロンで、体全体を覆います。体が完全に乾いたら、全身を布で覆い、35日~70日完全に乾かし、それで完成となります。死後に審判で困らないように、死者の書が描かれている巻物と、お守り、装飾品、を棺の中へ入れます。ミイラの胸の上には、死後の世界で役に立つ、スカラベ(フンコロガシの虫)の彫刻をのせます。

古代のエジプト人はミイラ化で最も重要なのは、体から水分を取り除くことだと知っていました。水分がなければ、細菌は繁殖しません。肉体の腐食を免れる事ができます。エジプト人たちは不思議な事にミイラ化の手順を文字で残してはいません。それは秘技だったのでしょうか?ミイラ化の工程の詳細は謎に包まれています。

古代エジプト人の死後に対する考え方は、死者の書や記録や、棺のまわりの装飾画などに繰り返し描かれています。

「古代の宇宙人」のミイラに対する面白い説は次回書きましょう。皆様良い年をお迎えください。
スポンサーサイト

不思議な話 その203 トランスヒューマンという考え方(3)

トランスヒューマンの考えと共通するもので、SFの世界でよく使われる考え方に「サイボーグ」があります。「サイボーグ」はサイバネテック・オーガニズムの略で、生命体と自動制御系の技術を融合させたものだそうです。具体的には人工臓器などを身体に埋め込む身体の機能を電子機器や人工物で代替したものです。石ノ森章太郎の漫画「サイボーグ009」の登場以降一般的になりました。

アメリカの医学者、マンフレッド・クラインズとネイザン・S・クラインが、1960年に提唱した考え方です。最初、人類の宇宙進出と結びつけて考案されたようです。小説や映画や漫画では、サイボーグとアンドロイドの区別が曖昧なようで、私も違いがはっきりはわからなかったですが、アンドロイドは人間の姿に似せて作られた「ヒト型ロボット」で、知らなかったのですが、男性に似せたものを「アンドロイド」と言うそうです。女性型を「ガイノイド」と呼ぶそうです。人間から一部やかなりの部分を機械にしたものを「サイボーグ」、人間の細胞がないもの機械だけの人間型ロボットが、「アンドロイド」や「ガイノイド」で、もちろん自立型なので、人工知能が搭載されます。

現在では、サイボーグ技術?の実用化が進行していて、ペースメーカーなどの人工心臓、人工義手、人工足、人工内耳、人工眼などがさらに進化しつつあり、近い将来それらがモデルの人間の能力を超えたものになるのは確実だと思います。これらの人工パーツの目的は、医療用の治療目的のものと、兵士などの身体機能強化などの目的になる恐れがあります。

サイボーグは人体の外部にとりつけて、動作させ、取り外し可能な非侵襲性型(体を傷つけないもの、欠損した身体を補うものも、非侵襲性型)と、侵襲性型、人体の内部に埋め込まれて動作する型の二つに分けられます。トランスヒューマニズムの脳にチップを埋め込むのも、侵襲性ですが、今の段階では、生体が装置を異物と捉え、拒絶反応が起きたり、手術による感染症の危険性があります。

機械には今のところ細胞のように自己復元能力がないので、故障や破損した時は、命にかかわることになります。体内インプラントのマイクロチップに発がん性があるとの声もあるそうです。人間の倫理的な側面と、心理的、生理的な、ヒトの拒否反応もありそうです。

兵士をサイボーグに変える研究というと、SF映画や小説の 世界のようですが、現実にアメリカの国防高等研究計画局(DARPA)
が、兵士の身体能力を人工的に強化する研究に取り組んでいます。非人間的な感じもしますが、実際に戦争で手や足を失った兵士に義手、義足を使い、再び戦闘に復帰出来るようにするインターフェイスをつけるようです。「脳科学システムデザイン」(NESD) の研究プログラムでは、脳とコンピューターをつなぐインターフェイスの研究をしています。(何か空恐ろしいような感じもします。)DARPAは、1立方センチメートル小さい脳に埋め込むチップを作ることを目標にしていて、この電気信号や化学信号をコンピューターに伝達させたいようです。その機関では、脳科学、生物工学、省電力、医療機器の各分野で新しいイノベーションが必要だと言っています。

話をゾルダン・イシュトバン氏のインタビューにもどしましょう。彼はトランスヒューマンの考え方を「人間は自然でないものに恐怖を覚えるものだが、テクノロジーを取り入れることで、肉体や生命が不自然なものになっていく時恐怖や嫌悪感を持つのが普通だが、どう克服するべきか?」という質問に対して、ゾルダン氏は、「自然、不自然と二極対立させることこそ不毛な考えだ。たとえば、手を考えた時、この手は、数百万年前はもっと毛深く、形も異なっていて、より動物的だったかもしれない。自然、不自然というのは、その時の価値観にすぎない。仮に未来にロボットになっていたとしても、その時は、その姿しか知らないのであれば、自然にかんじるのではないか。道具や科学を用いて、進化することは、我々に備わった性質だ。我々は何にだってなれる。環境問題もテクノロジーによって解決可能だ。遺伝子操作で、森を10倍のスピードで成長させることが出来るだろう。人工肉の開発が進めば、動物を殺す必要もなくなるだろう。世界では広大な農地が家畜の為に使われている。今のように肉を消費しつつ、自然をもっと豊かにできるだろう。」

「その考えをつきつめると、人間はロボットやサイボーグになってしまうのでは?」という質問に対して、ゾルダン氏は「いつか人間はそうなると思う。だがそれを恐れるべきかはわからない。重要なことは人間性をどのように残すか、ということだ。人間の良いところを残して、テクノロジーの良い所と融合させる。そして、今よりも良い世界の実現を目指す。・・・さらに遠い未来には、人類は記憶をコンピューターからダウンロードできるようになるかもしれない。あるいは、生命自体がバーチャルなものになり、肉体はどこかに何かしらのかたちで残しておく程度になるのかもしれない。記憶情報をロボットに移植することも、3Dプリンティングで作った人体に記憶を移植することも出来るかもしれない。これは記憶のクローンという新しいアイディアだ。」

ゾルダン氏は人間のその先は映画「マトリックス」のようにバーチャルなコンピューター上の世界で、人工の7割ほどが生活する社会になれば、地球の食糧やエネルギーの問題は解決すると言っています。

ゾルダン氏の考えは人間の性善説に基づいた理想的なものだと思います。前に私がブログで紹介したジョニー・デップが主演した「トランセンデンス」(超越という意味)の映画で優れた頭脳の学者が自分の死ぬことを予期して記憶をコンピューターのなかに入るようにして、彼の人格がコンピューターになって、妻と会話したり、魔法のようなことをしますが、最後には彼のエゴによって自滅してしまいます。テクノロジーや技術は、善にも悪にも利用されてしまうことがあります。

人間の身体は私が思うに、実は生体ロボットとして完璧に近いものです。これに手を加えすぎると人間ではないものになるのではないかと思います。治療目的の補完的な改造は良いとしても、本来の姿から逸脱すると、人間というシステム自体が壊れてしまうことになるのではないでしょうか?魂は、その記憶とキャラクターを持ち、すでに、肉体から肉体へと記憶という情報を持ちながら、変遷しているのです。今の世界が十分バーチャルな世界かもしれません。人の精神はまだ、肉体を持たなくていいほどには成長していないのかもしれません。

次回にまた興味のあるテーマを探します。





不思議な話 その202 トランスヒューマニズムという考え方(2)

話を最初に書いたゾルダン・イシュトバン氏にもどしますね。(以降はゾルダン氏)彼は、トランスヒューマニスト党を作り、この前の大統領選に出たのですが、彼のトランス・ヒューマニストの最終目標は、ロボットに介護されるのではなくて、彼自身がロボットになることだそうです。衝撃的な考え方ですね。ゾルダン氏いわく「人間は、何かを飲んだり、食べたり、寝たり、排泄したりするが、ロボットには、そんなことは必要ない。最善の方法は、人工心臓や人工足などを取り入れ、頭にチップを埋め込むことだ。すべての生物性を」取り去ることが重要になるだろう。これはトランスヒューマニストにとって重要な考え方だ。生物であることは原始的なんだ。」と日系ビジネス12月8日号の「人間は、いずれ、ロボットになる」という記事でインタビューを受けています。少し記事をまとめて、一部を引用してみましょう。

トランスヒューマニズムは世界で数百万人が参加する社会運動だそうです。活動自体は概念はずっと前にあったものの、1950年代から社会運動は始まり、SFの中で語られる思想でしたが、次第に具体的な活動になっていきます。科学やテクノロジーを用いてラディカルに人間を変えるという考えで、我々の生命のあり方そのものを変えるものだと言っています。

ゾルダン氏は、アメリカの作家で、哲学者で、未来学者で、1973年にカリフォルニア州ロサンゼルスで生まれた43歳です。コロンビア大学で宗教学と哲学を学びナショナルジオグラフィックチャンネルで記者をしていました。その後ハフィントンポストやサイコロジートゥディなどに定期的にコラムを書いています。2013年に『The Transhumanist Wager』 (トランスヒューマニストに賭ける)という小説を書きました。その後トランスヒューマニストとして認知されました。2014年にトランスヒューマニスト党を設立し、2016年の大統領選に出馬しました。

ゾルダン氏は彼自身手に米粒の半分くらいの大きさのマイクロチップを注射で埋め込んでいます。彼いわく、すでに50万人の人がこのチップを入れている?ということですが、本当なのでしょうか?彼が手を近づけると、自分の名刺情報を送信することが出来るし、家の鍵を開けたりすることが出来ます。彼は今はこのくらいですが、いずれは、自動車の鍵を開けたり、オフィスの入館証、空港のセキュリティシステムで使われたりするだろうと予言しています。医療関係者も、血液型や持病など、搬送されてくる患者の情報を瞬時に得られるようになると予想しています。希望する人にチップを入れるのはいいとしても、個人情報を強制的に体に入れさせられて、管理されることを嫌がる人々もいます。私もいくら便利だとしても、体にチップをいれたくはありません。皆さんはどうでしょうか?

ゾルダン氏によると、「トランスヒューマニズムとは、テクノロジーの発展を今以上に進め、生活や肉体にそれを積極的に取り入れようということで、ゴールは科学とテクノロジーを駆使して、死を乗り越えることだ。私は今後25年くらいの間に人々は体のいろいろな部分を取り替えるようになると考えている。事故で肉体が付随になった人の脳にデバイスを移植して、身体を動かせるようにしたり、目の見えない人の眼球にデバイスを移植して目を見えるようにしたり、失われた機能の再生が基本だが、それだけではない。」と言っています。

さらに彼は未来を予測しています。「私の予測では、10年後には、50%の米国人が身体に何かしらのチップを埋め込むだろう。25年後には実際に身体の一部を機械と取り替えるようになるだろう。それが便利だからだ。クレジットカードも身分証も飛行機のチケットも不要になるだろう。人工心臓は、研究が進んでいて、すでに試験的に移植されている。フランスのバイオメディカル企業カルマト社などが有名だ。心臓にかかわる病気で亡くなる人は少なくない。心臓が機械と交換可能になれば、死は劇的に変わるだろう。心臓が健康であれば、その他の臓器もいい状態に保てる。心臓に限らず、我々は様々なものを取り替えることになるはずだ。触れたものを感じることが出来る人工の手の研究も始まっている。冷たいとか、柔らかいとか、最初はそういう情報を指先から得るレベルだが、やがて、人間よりも義手のほうが正確になり、触れたものの温度とか、触っただけで、何に触れたかわかるようになる。電子レンジのように、握ったものを指先で温めることさえ、できるようになるかもしれない。」と彼はインタビューで未来を予測して答えています。

未来は、人工的な人体のパーツが人間の能力を超えたものになるかもしれません。人間の感情はそれらのサイボーグとも言える、超人に恐怖の情をもつかもしれません。それから、人体のパーツを持たない、人工知能を持った100%の機械のロボットと半分が機械のパーツのサイボーグとはどこが違うのかというのも、未来のある時点では、問題になるかもしれません。ロボットに魂が宿るのかという大きな命題もあります。次回にゾルダン氏の意見をまとめながら、さらに進めて考えてみましょう。

不思議な話 その201 「トランスヒューマニズム」という考え方(1)

ドナルド・トランプ氏が、今年の大統領選で勝利して、来年1月から、第45代大統領になるようですね。従来のエスタブリッシュメントの政治の専門家を廃して、型破りな大統領になりそうですが、日本への影響はどんなでしょうか?選挙運動中のアメリカの新聞、雑誌、TVのトランプ叩きはすごかったですね。9割以上のマスコミがクリントン支持でした。でも、勝敗が決した後の手のひら返しもかなり早かったように思います。トランプを叩いていた「タイム」誌はトランプ氏を今年の顔で表紙にしました。

その2016年の大統領選で、誰でも大統領には(猫でさえ)立候補できるのですが、作家で哲学者のゾルタン・イシュトヴァン氏が、「トランスヒューマニスト党」という党を作って大統領選に出ていたというのを、TVを見て初めて知りました。調べてみると、トランスヒューマニスト党はトランスヒューマニズムという考えをもとにしているということがわかりました。トランスヒューマニズムは、その考え方の起源は古くはルネッサンスからあったそうです。新しい科学技術を用いて、人間の体と知力を進化させ、人間を前例のないほど向上、進化させようとする考え方だそうです。日本語では、「超人間主義」と訳されたりするようです。この考えは最近では、1923年の生物学者であるJ・B・S・ホールデン(1892年~1964年)の著書『ダイダロス、あるいは科学と未来』と、幼少期からホールデンの友人オルダス・ハクスリー(1894年~1963年)の小説『すばらし新世界』の考え方をオルダスの兄のジュリアン・ハクスリーが「トランスヒューマニズム」と名付けました。

後者の『すばらしい新世界』では、SF小説ですが、その舞台は未来の架空の全体主義国家で、徹底した階級社会で効率よく国を支配するために、人の自然交配は禁止されている社会です。それを可能にしたのは、胎児を体外発生させることが出来る生殖テクノロジーです。この小説では、すべて、人の胎児は、体外受精を経て、人工的なビンの中で生育してから、月みちて、「出ビン」(デキャント)されます。そこには、男女の体の接触はなく、子宮もなく、愛とか恋などもない世界として描かれています。この中では夢?のテクノロジーなのか、受精卵の成熟の過程をものすごい速さで促進する技術と、最大で96個の受精卵を培養する技術があり、その二つを組み合わせると、2年以内に1個の卵巣から、同数の精子を受精させて、総勢1万人以上の、150以上の一卵生の兄弟姉妹を発生させるという設定になっています。胎児はまた、ビンにつめられて、大人になるまで栄養補給を受けて優生学的操作と条件反射教育を受けるというものです。(まるで、人間の生産工場のようですね。)作者は警鐘を鳴らして書いていたのだと思いますが、性的ふれあいを通しての他者と触れ合い、愛するという情の喪失と、子宮内にいるべき胎児とその母親の分離、母子の感情の喪失も描いています。この人工的に人間を増やすという設定やアイディアはその後のSF小説、映画、アニメに多用されています。

生物学者のホールデンは、『ダイダロス、あるいは科学と未来』(1924年)で、トランスヒューマニズム(超人間主義)集団遺伝学上で、新しい科学技術を用い、人工的に人間の体と認知能力を進化させる可能性を著しました。キリスト教的価値観では、神が創造した人体の能力を宗教的タブーを乗り越えて、科学の力で、進化させようとするもので、彼は「クローン」という言葉も、最初に作った人です。話は飛びますが、ヒットラーの予言で、超人が出てくると言ってたのは、この考え方をヒットラーも知っていたか、読んでいたのかもしれません。ホールデンも当時の最先端の生物学的知見をふまえて、未来の科学技術を予言していました。体外発生の成功を1951年と予測しました。実際には1978年にイギリスの生理学者ロバート・G・エドワーズが体外受精に成功しました。けれどもまだ、母体の代わりとなる設備は発明されていません。このホールデンの考えは理想的すぎると批判されています。

ホールデンは、21世紀後半の英国では、自然な生殖の営みから生まれる子供の数は、30%未満、残りはすべて体外受精か体外発生つまり、子宮を使わないで人工的に発生させるものになるのではないかと予言しています。彼が思い描く生物学的ユートピアでは、人間は体外発生器から誕生し、さまざまな薬品と健康食品の恩恵に浴して、快適な生活を送り、最後は穏やかで苦しみの無い死を迎えるというのです。

先程の、ハクスリーの『すばらしい世界』はこのホールデンの考えを小説にして、先端的な医療テクノロジーを手にした国家が、一見バラ色のユートピアに見える世界を、実は生殖を支配している人間の自然な性を抑圧するディストピア(理想的でない社会)に変えていく様が描かれて未来の生殖技術の偏った考えに警鐘を鳴らしています。

生命科学が進んで、このまま行くと、この二人の考えた技術は未来では、実現可能になるかもしれません。その時、生命倫理の問題が重要な課題になることでしょう。

もう一つの生命革命は「体細胞クローン技術による生殖です。ジャン・ボードリヤールは『透きとおった悪』(1990)という小説の中で、人間の体細胞クローニングがそう遠くない将来、人間においても成功することを見通し、人間のクローン化が持ちうる問題を考えているのだそうです。それには二つの大きな問題があって、第1の問題は、自分以外の他者の関与を否定しています。生殖行為はもちろん、他の個体との生殖細胞同士の結合を無用にしてしまいます。すべてを他者なしですませるので、理論的には、一つの個体で無限に増殖を繰り返すことができるのです。

第2の問題は、人間の全体のシステムの終焉で、人の身体を是非を考えないで、部品とみなす視点から見ると、人間の人工臓器や他の動物の臓器が人工の器官とされるようになります。体細胞クローニングでは、個々の細胞の遺伝子情報が、人工器官としての役割を担った、サイバネッテックな人工器官とされます。体細胞の人工器官から、全体の細胞を作り出すことが可能になると、全体という概念が喪失して、個々の個体しか残らなくなります。ボードリヤールは他者性の廃絶も、全体性の終焉も身体性の崩壊を招いてしまうと言っています。極端にいうと、一つの個体しかその星に反映しなくなり、その個体の生物性は失われ、滅びてしまうことになると思います。

次回は、現代のトランスヒューマニズムの考えとその技術を突き詰めていくと、結果に起こることを考えます。



不思議な話 その200 コミュニケーション障害について(2)

前回からのテーマの続きです。

「対人恐怖」の中で特殊なものは、「男性恐怖症」(過去の男性との人間関係やトラウマから、男性と話したり関わったりするのが、怖くなってその状態を避けようとします。他の男性は大丈夫でも、緊張や相手に嫌われないかという不安から、好きな男性にだけ話せないなどの症状がでる人もいます。)「女性恐怖症」は、若い男性に多く見られるそうですが、自分と同世代の女性と思うような会話ができないと悩みます。特定の好きな女性にだけ、話しが出来なくて、固まってしまう男性もいます。

一般的な口下手で、雑談の時などに、自分の思っていることが上手く言えないという症状が出ることがあります。

「外食恐怖症」は、大勢の人との食事会などで、自分だけ浮いてしまうのではないかと、他人と一緒の食事の場を避けるような行動をしたり、大勢の中にいてパニックとなって、外食の場面が嫌いになってしまう、パターンです。

「電話恐怖症」は、会社などの職場で、まわりの人が気になって、電話に出たり、こちらから電話をかけるのが、苦手な症状です。相手に緊張して何を話したらいいかわからなくなってしまう、のもこの症状です。

「スピーチ恐怖症」は、朝の朝礼や会議などで、大勢の人々の前で話さなければ行けないときに、緊張や不安を感じて、その場にいたたまれなくなってしまいます。パニックが起こることもあります。

「人見知り」の症状は慣れた人とならスムーズに話せるのに、初対面の人と上手く話せないであがってしまうことです。

「場面緘黙症」(ばめんかんもくしょう)は、休み時間などに、他の人達がある話題で盛り上がっているのに、言葉が浮かばなくて何も話せなくなってしまうのがこの症状です。話題に興味がなくて、会話が苦痛になるのも、コミュニケーションの障害になります。

以上、挙げた症状は、病気というより、誰にでも起こり得る症状ですが、やや病気に近いコミュニケーションに困難を与える症状を次にあげます。

「自己臭恐怖症」は自分の口臭や体臭が他人に不快な感情を起こすのではないかと、関わりを制限したり、人と関わるのをさけようとしてコミュニケーションに困難を起こすものです。劣等感や何かのきっかけからの自己否定感、子供の頃にそのような考えにとらわれたりすることが原因かもしれません。

「手汗多汗症」これは、手汗が異常に出てしまう、(実際にたくさん出る場合と、手汗に執着してしまう。)常に注意が手汗の方に向いてしまうと、会話がぎこちなくなったりします。

「視線恐怖症」は、まわりの人から見られているように感じ、言葉や行動がぎこちなくなるもので、人からどう見られるだろうと気になって、自分の意見や考えを出さなくなります。(これに妄想や幻聴を伴うと別の病気になるので、ここでの視線恐怖は妄想を伴わないものをさします。)

「視線恐怖」と対でおこることがあるのは、「赤面恐怖症」です。これは人と話しているときに顔が赤くなってしまうことを気にするもので、赤くなったのを人に気づかれることを気にします。比較的若い人に多いようです。この場合顔が赤くなっているかどうかに多くの注意がさかれるので、コミュニケーションに支障がでます。

「唾恐怖症」は、学校や職場など、」まわりに大勢の人がいる状況で、唾を飲み込むときの音がまわりに気づかれ変に思われるのではないかと感じてしまう症状です。そのため、会話中に唾を飲み込むタイミングに集中してしまうため、円滑なコミュニケーションに支障がでたりします。

「震え恐怖症」人前で話していると、頭や足や、手などの一部が震えてしまい、人前で話すのを避けようとして、コミュニケーションに障害を起こすものです。

「笑顔恐怖症」は、会話中に愛想笑いをする場面で、笑顔がひきつってしまうと悩む症状で、自分の顔の引きつりに注意が向いてしまい、人と話すのを避けるようになったり、コミュニケーションに困難を生じます。

この他にもコミュニケーションを妨げる症状はたくさんあると思いますが、目立つものをあげてみました。これらの症状は前にあげたものと同じように、家族に対しては現れないことが多く、他人(家から外の世間の人々)に対して起こります。これらの症状を起こしている原因がわかると症状が軽減することがあります。

次にいままであげたものの原因と思われる可能性のあるものをあげてみましょう。まず、治療がすぐ必要なものに、統合失調症などからくる、誤った思考回路の思い込みのコミュニケーションの障害の場合は今のところ特効薬がないので、それぞれの症状にあった薬を処方されて、症状を和らげることに重点がおかれます。統合失調症とひとくくりにされても、症状は千差万別で、いろいろな症状がでるので、投薬とともにカウセリングが必要なのかもしれません。鬱や躁の症状を伴う統合失調症もあるかもしれません。逆に抗精神病薬が原因の妄想が起こることがないともいえません。

次にPTSDと言われる「心的外傷後ストレス障害」で、声の障害や失語症、同じことが繰り返されるのではという恐怖で、人との関わりが怖くなる症状が出ることがあります。子供の頃からのいじめられた経験や、職場でのいじめ、自分にとって重大な影響を与えられた失恋などもPTSDと同じような経験になります。

言語に関する機能の障害もコミュニケーションに困難を起こす原因となります。聴覚障害や、発声器官障害、吃音障害、声の障害、言語障害、言語発達の障害、失語症、あるいは、脳の機能による、自閉症や知能等の発達の遅れなどが原因のコミュニケーション障害などです。

病気や事故などが原因の脳の障害が原因でコミュニケーションがとリにくいものに、認知症、脳溢血、脳梗塞後の言語障害、高熱等の病気による脳の機能の低下があります。後天的な脳の機能障害はコミュニケーション障害の原因となります。

発達障害は、重度のものと軽度のもので、全然違います。先程あげた、自閉症はコミュニケーション障害としては重いものになります。日常生活に大きく影響するからです。やや軽いものとして、アスペルガー症候群や、注意欠陥・ADHD(多動性障害)、などがあります。後者のほうは、日常生活は、仕事をしたり学校に行ったり普通にできます。まわりが問題視しすぎて症状として注目されました。昔なら、個性的とかやや変わった人で終わったことかもしれません。

以上の発達障害より軽い障害として、日常生活に誰にでもあることですが、それがたくさん積み重なったり、程度が大きいと、コミュニケーション障害の原因になるものがあります。箇条書きにすると、1.約束をすぐに忘れてしまう。 2.一方的に話し出すと止まらなくなる。 3.思ったことを(相手が怒ろうが変に思おうが)そのまま口にだしてしまう。 4.わがままで自分勝手だと思われて人の話を聞かない。 5常識にかけ離れたことをやったり言ったりすることが異常に多い。 6.人の表情や場の空気を読むことが苦手な人、「KY」と呼ばれていますが、少しならどの人にもあてはまりますね。 7.自分のことや興味のあることだけを一方的に話すため、他者と会話が成り立たないことが多い。 8.話がものすごく飛んだり、本題からずれたことを言い続けても自覚がない。 9.筋道をたてて、論理的に話すことができない。(これも多くの人に当てはまるところもあるでしょうが、程度が甚だしい場合です。) 10.発話がなめらかでない上に、口が重く自分を表現するのが下手。 11.勇気を持って話そうとすると、相手がその場から立ち去ってしまう。話の間があきすぎてしまう。 12.寡黙でもまわりの人を見下しているように見え、あるいはまわりに関心がない。(好きなことに熱中してまわりを無視するなど) 13.意味不明な言動を繰り返し、奇声をあげる。 14.他の人が共感しにくいこだわりを持っている。(これは自閉傾向が強い人にもよく見られます。) 15.人と関わりたがるが、話題が一致しないため、あるいはその知識や情報がないため、会話のキャッチボールができない。(これは、若者と老人の間でも、普通に起こります。) 16.意識的でなく、言動が暴力的だったり、まわりを不安にさせる。 17.言葉の間違いが多かったり、見当違いなことを言ったり、あまりにも多くおなじ言葉やフレーズを繰り返す。

などのコミュニケーション障害を引き起こすと思われる原因があります。1~17項目のことは誰にでも少しはその傾向があったり、自覚すれば、変えられるものです。他人から指摘されないと自分から気づきにくいものではありますが・・・病的なものに由来しないものは、必ず改善します。

長くなりました。次回は別のテーマを探しましょう。

プロフィール

観音寺りえ

Author:観音寺りえ
アトラス研究所の観音寺りえです。

鑑定とカウンセリングご希望
の方は当研究所 
住所: 東京都文京区千石4-37-10 
TEL: 03-3942-1341
まで。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード