未来観と生命観 -手塚治虫の火の鳥からー中編その1

 新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 今日は火の鳥の内容に入ります。お正月の1回目なので、「羽衣編」のことを書こうと思います。火の鳥の羽衣編は18種類の時代の話の中でいろいろな要素を盛りだくさんに含んでいます。民話の羽衣伝説を下敷きに、雪女の要素があったり、かぐや姫を思い出させたり、芥川龍之介の「藪の中」という小説の中のシーンににていたり・・・

 やはり、火の鳥の中で必ず出てくる鼻の大きな猿田の生まれ変わりの人物が出て来ます。この話では主人公になっています。

 「羽衣編」の簡単なあらすじは、母親に捨てられてみなし児として育ったズク(猿田の転世した者)は生きるために山賊になっています。山で会った不思議な少女(「ブラック・ジャックのピノコのような外見の少女です。)に松の浜辺に行くよう言われます。浜辺には光る羽衣を巻いた美しい女性が倒れていて、ズクは山賊のさがで、女性から高価そうな光る衣を奪います。

 美しい女の人は、記憶を失っていましたが、光る衣がなぜか大切な気がして、ズクのあとをついて来てしまいます。記憶を失った女性は、ズクの家で彼と一緒に暮らし始めます。ズクは彼女に自分を置いて出て行った母親の名前「トキ」という名前を付けます。ズクは食べるために、山の峠を通りかかる旅人をつぎつぎと襲い、ある時は傷つけて金品を奪います。奪ったものは村の強欲な長者のところに、売りに行ってお金に替えて生活しています。

 不思議な少女はズクの良心を呼び起こそうと、ある時は説教したり、ある時は、ズクを脅したりして強盗をやめさせようとします。ある時、ズクが旅人を刺そうとして、家族連れなので躊躇していると、子供に刺されてしまいます。その看病をトキは一生懸命して、二人は次第に愛し合うようになります。

 トキが身ごもって、ナギという男の子を産むと、ズクは子供の為に、山賊をやめようとします。さらに貧しい生活が続きますが二人は幸せそうでした。
しかし食べていけなくなって、ズクはまた山賊に戻りそうになります。不思議な少女は「鬼のような悪い事をしていると本当の鬼に襲われるよ」と警告します。

 ところが、冬の寒い日に幼いナギが高熱を出して死にそうになり、トキは大切な衣をズクに与え自分はどうなってもいいから子供と夫を助けるために、村に衣を売りに行って欲しいと夫に頼みます。ズクは強欲な長者のところに行って子供の為に薬を分けて欲しいと頼みますが、相手にされないで断られます。長者は用心棒達に命じて腕力で衣をズクから奪おうとします。(ホントの鬼って強欲で残酷なお金持ちの長者さんだったんですね。)

 もみあっているうちに、長者の家が火事になって、ズクはどさくさで薬をもってきますが、傷を負って自分の家の近くの妻と初めて会った松の木の根元で、息絶えます。トキは愛する夫を失ったのです。

 トキが死んでいる夫を見つけて、駆け寄った時に、不思議な少女が出てきて、火の鳥に変身します。正確には、火の鳥が不思議な少女に変身していたわけです。火の鳥の姿を見たトキは、一瞬にして、記憶が戻ります。未来の布の羽衣を持っていたトキは、遠い未来から火の鳥につれてこられたズクの母親の魂のたくさん転生した果ての未来人の女性だったのです。彼女は未来でもズクに対してやったのと同じように、未来での自分の幼い息子を捨てて、育児から逃げようとしていたのでした。火の鳥は繰り返していることを気付かせる為に、物事の(仏教では)因果を理解させる為に因果の最初の原点より少し後に、彼女を送ったのでした。そして、不思議な少女になり二人をナビゲイト(導いていたのです。)

 子供を残して去ってしまった結末に子供が人生を恨んで、人を殺したり、盗人になってしまったということを彼女に気付かせようとしたというテーマです。

 手塚氏は仏教の因果応報話やいろいろなものを見てこのお話を構築したと思います。従来の羽衣伝説より面白く脚色されていますね。

 実際の生まれ変わりの事象は、既存仏教の俗説の因果応報的な法則で動くものではありません。悪い事をしたら、悪い事が繰り返されるという単純なものではないのです。

 単純にリンクとして自分で設定するのです。残念なのは、母親に捨てられて、悪い人になってしまったという設定です。母親がこの年齢で離れると言う事や子供を捨てて別の生き方をするというのは、道徳的にみると許されないと思うかもしれません。しかし、縁がそのときまでであって、母親に捨てられた人が、素晴らしい偉業をなしとげたり、普通の人の経験できないことを知ったり理解したりするかもしれません。生まれ変わりは道徳の生まれる以前からありました。生まれ変わる人生それぞれの魂にとっては善悪はないのです。

 「羽衣編」は素晴らしい作品でしたが、転生に関しては、もっと複雑に扱ってもらえれば、さらに素晴らしいものになったと思います。

 次回は別の作品をとりあげ、最近思いついた話題もあったら書きますね。

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