不思議な話 その149男女の脳の違い(6)恋愛やセックス

 今回は「男女の脳の違い」のまとめです。「セックス」によって感じるということは、味気ない言い方をすると、触覚によって体の神経センサーに起こった刺激を、脳に伝えて、愛情や快感をもたらす化学物質を脳から出して、脳が反芻して感じる反応だと思います。つまり、「セックス」は脳でする、と言ってもいいのではないかと思うのですが、未来のSF小説や映画では、遠隔で体をふれあうことなくセックスをしている場面がよく出てきます。いわゆるバーチャルリアリティ上でのセックスですが、未来では可能になるでしょう。男女の違いはとても複雑で不思議ですが、脳の違いは性行動の違いにも現れます。以下の話は結婚している、いないにかかわらず、特定の固定のパートナーとの合意の上でのセックスの話です。

 ウィリアム・H・マスターズ博士とバージニア・E・ジョンソン(マスターズ)夫妻は、その結婚前から、婚姻中も含めて、20年間以上も人間の性的機能の科学的な研究を協力して行いました。二人は、スタッフやボランティアの人々とともに人間の性反応の生理学的な本質を追求しようと、努力しました。たくさんの試行錯誤の実験から、結果を導き出したり、性不全で壊れかけた夫婦の絆を取り戻そうと努力しました。彼らが研究を発表した1960年代後半や1970年までは、欧米の道徳的価値観のもと、セックスについての無知や神話や迷信のたぐいが横行していました。女性は受け身であり男性は、性に対して積極的でなければいけないなどです。これを「ダブル・スタンダード」というらしいのですが、女は女らしく、男は男らしい性行動をとるべきだというようなことです。社会の上でのセックスはそれまで、男性には寛容で、女性には厳しい行動規範を求めました。子供を作るための性行動でもあるのですが、皮肉なことに妊娠をさける避妊具や避妊薬の登場で、性に関するこのダブル・スタンダードな考え方に大きな革命を巻き起こしました。

 妊娠のためだけのセックスを強要されると、男は常に男らしく積極的で野性的でなければならず、女性はヴァージニティ(処女性)を重要視され常に受け身でなければいけないという考えから、「シングル・スタンダート」(男女の使い分けのない)同等なセックスの考え方ができて変化が起こりました。パートナー間でも、お互いに望まないセックスはしなくていいというものです。お互いが対等なパートナーとして、セックスを楽しむという考え方です。これには、セックスに対する責任も伴うというマスターズ夫婦のある本の序文を後で引用してみましょう。

 とりあえず、マスターズ夫妻が実験の過程で、発見した男女の性反応の違いは、男女の体と脳の仕組みの違いと、密接な関係があることが分かりました。男女ともに性反応には、「興奮期」と「平坦期」(高原期)と「オーガズム期」と「消退期」という4つの時期に分かれるそうです。女性もその時期はあるのですが、男性がこの4つの時期を決まったパターンで一通り経過して、消退期のあとは、しばらく性反応が鈍くなってしまうのに対して、女性は人それぞれによっても違いますが、同じ人で同じ相手とでも、そのコンデションによって多様な性反応を示すというのです。

 セックスはアートに例えられたりもしますが、よくあるたとえでは二人で真っ白なキャンパスに絵を描いているとすると、男性の絵の描き方は定形の描き方がありますが、女性には決まり事はなく、多様な描き方をするということでしょうか?男性の性反応は、一連の経過を辿って、消退期には、リセットされて0になります。その後はエネルギーをチャージして、興奮期にいたる刺激が必要になります。消退期の後は女性に興味を示さなくなる男性もいるわけですね。女性の場合は一からチャージする必要がないので、いろいろな経過をたどります。みんながみんな感じないかもしれませんし、100人100様ということになります。

 この過程の違いは、男女のセックスに長所ももたらしますが、欠点も与えます。良い点は変化に富んでいて、補いあうことができます。欠点は、女性が、男性を一方的だと感じたり、自分と関わるのは性的な行為自体だけが目的ではないかと誤解したり、気持ちが置いて行かれるように感じることです。ですから、女性の気持ちを汲むとしたら、すぐその場を立ち去ったり、背中を向けてすぐ寝てしまうのではなく、腕枕をして安心させる配慮があると関係が長続きするコツになるでしょう。それでもこれは個人差があるので、性行為の後もいちゃつきたい男性もいれば、すぐにその場を立ち去ろうとする女性もいるかもしれません。相手の気持ちを少し考えられる余裕があるといいですね。

マスターズ夫妻は、その後、男女の性不全の研究もしました。人工受精の技術も其の頃は黎明期だったのかもしれませんが、病院のオフィスでは、導入しつつ、精神面での性不全の治療も行いました。男性の性の不全は、心理的な原因か体の原因かで、セックスのできない状態になった患者さんを、実験的なカップルで治そうとしました。その原因をいろいろなアプローチでみつけようとしたのです。フロイトの精神医学的対処法だけでなく、キンゼイ博士の統計上のアンケートの研究とも異なり、性の問題で悩んでいる人々の実質的な救世主になりました。全部解決したというわけには行かなかったでしょうが、それまで、そのような問題を表に出して、治療するということがなかったので、それまでは、本人にとっては辛い問題を人に言えずに我慢するだけということだったのでしょう。夫妻は同性愛のカップルにも偏見を持っていなかったと思います。

 1974年にマスターズ夫妻が書いた対談集の本を見つけました。『The Pleasure Bond』(邦題『快楽のきずな』石川弘義氏訳)この本はパトナー間の性の悩みについて、マスターズ夫妻が対談形式で答えるという本で、その本のまえがきに訳者が「非常に多くの男女が、性の表現を楽しむという本来ならば、健康的な快楽であるはずのものを、欲求不満や恐怖に変化させてしまい、それにすっかりとりつかれてしまっているという状況について、どうしたらこんなあやまちを犯さずにすむかをおしえてあげることが本書の目的なのである。」と言っています。つまり、夫婦やパートナー間で、多くの性的諸関係の問題が出てきた時に、手を貸してあげようということなのです。現代の日本でも、パートナー間でのセックスレスが大きな問題になっています。若いカップルの間でも、セックスレスが多くなっているので、昔よりは出生率が下がっています。また、結婚するとか固定のパートナーと付き合う機会も昔より減ってきているかもしれません。これは、性に対する情報やそれのみでなく、恋愛に関する情報が溢れすぎていることも一因かもしれません。皆がこうするから同じようにするとか、こうしないからしないとか、恋愛やセックスは個人的な要素が大きいですが、人が生きる上で大切なことの一つです。性的なエネルギーはいい方向であれば生きるエネルギーにもつながります。軽んじられないことだと思います。

 最後に先ほどの対談集のマスターズ博士の序文を引用します。
 「歴史的に男性は性的な責任を負う役割をふりあてられてきたし、一方、女性はセックスを受け入れるという役割をおしつけられてきた。男と女をこんなステレオタイプ(月並みな考え)にはめてしまうのは、生まれながらにして両性に与えられている能力について、ほとんど何の知識もないか、考察が足りないせいなのだ。・・・略・・・セクシュアリティをすべて汚いジョークにしてしまう人もいれば、少しでもセックスを連想させる事項となるとすぐ目くじらを立てたり抑制したり、うるさく騒ぎ立てる人もいる。・・・セックスに対する現実的で、かつ満足の行くような考え方を発達させている人々がかなりいる。つまり一人一人、そのセックスの相手とともに、性的責任は双方で、わかちあうものだと学んできた人たちである。・・・(過去の)農業中心の社会においては、夫も妻も彼らに独特のライフスタイルで性的にうまくまとまることが必要であったし、またその機会にも恵まれていた。しかし産業革命が到来してまもなくダブルスタンダードは男と女を社会的にも、性的にも引き離していく手段となっていく。労働の倫理と社会的要求とによって、男と女の生活がはっきり区別されてしまったということに人々が気づくにつれて、セックスは男女共通の喜びの源であるという共通の概念がうすれていったのである。男と女は別々のゴールを目指すようになり、夫と妻はお互いの必要性を見失ってしまうことになる。それに加えて宗教的規制もあまねくいきわたっており、健康問題の専門家たちがセックスの問題をあつかうことに対して、社会はそれを受け入れるほど寛容性を持たず、また無知でもあった。・・・私たちは性反応を一つの自然な機能としての正しい位置から引き離して考えるようになり、そのため、セックスに関する間違った概念やタブーが社会構造の中で絶対に不可欠な部分を占めるにいたった。セックスすなわち罪であるという概念、生殖の為のみのセックスという考え方が大きくのさばり、人間的な暖かさのためのセックスとか共通の喜びのためのセックスなどという考え方は、すっかり影がうすくなってしまい、その挙句には、何百何千もの男女がひどい神経症的な、あるいはあきらかに精神病的な行動パターンにとりつかれてしまうことになった。このようにして、セックスの機能を他の自然な過程とはどこか違ったものにする考え方がしっかりと根をはり、その結果性的役割がわりあてられ、セックスの慣習が樹立され、セックスに関する制限がおしつけられるようになってしまった。」

 マスターズ夫妻の本の序文のほんの一部ですが、明治時代以降の近代化した日本や現代の日本にも、この価値観が浸透して、少なくない人々を苦しめているかもしれません。また、いろいろな問題、離婚が多発したり、セックスレスや少子化の問題にもからんでいるのかもしれません。
 
 長くなったので、次回は新しいテーマで書きましょう。
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観音寺りえ

Author:観音寺りえ
アトラス研究所の観音寺りえです。

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